はる なみ みらい

雑音のない音の感じ。技術のみらいを考えたい

クローン人間をまだ見たことがない理由

クローン羊が生まれてから20年が経ちましたが、クローン人間の話題はあまり話題に上がってきません。
じゃあ技術が進歩していないのか、と言えばそんなことはなくて、馬のクローンなんて話題も出ています。

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それでは、未だクローン人間を見たことがない理由は何なのか?
答えの可能性としては、「すでに生まれているが、一般人に交じっているのでわからない」とか、「極秘に研究されているので、情報公開されないだけ」という答えもあり得ますが、
私の考える答えは、

(現時点において)産み出したところで大した利点がないから

です。

技術開発というものは、非常に大変なものです。たくさんの人が全力で考え抜いて、いっぱい失敗して、やっと一歩進むようなものです。ただ、投入される人が多いほど(比例はしないものの)研究開発は促進されていきます。
より多くの人が投入されるようにするには、誰かがお金を出さなくてはいけません。
お金の出どころは、基本的に、経済的利益を得ようとする組織・人(企業)か、公共の利益につなげることを期待する公共機関(国)しかありません。
 先進国では、クローン人間は公共の利益にならない、というスタンスですので、国からの資金投入は期待できません。そこで、クローン人間が経済的利益につながるのか、という点がポイントになります。

 クローン人間の収益化手段について、少しアイデアを考えてみましょう。
1.金持ちに、自分のクローンを作ってもらい、永遠の命のようなものを実現する

2.死んでしまった家族のクローンを作って、生前の生活を取り戻す

3.他人のクローンを作って、その人に成りすまして、財産を横取りする

4.アイドルのクローンを作って、一緒に生活する

5.過去の天才のクローンを作って、知恵を利用する

6.自分の言いなりになる労働者を大量確保する

(ほとんど犯罪の匂いしかしませんね)
こういった手段について考えると、大体の場合、元となった人間と同じように成長し、同じような能力を持つことが前提になっています。しかし、実際のところ、成長には後天的な要素の影響も大きいですから、同じような能力を持つことは保証できません。また、人を育てることを考えれば、20年以上の長期の取り組みが必要になりますので、
金銭的にも気持ち的にも相当の覚悟が必要です。
そんなわけで、得られる利益が不確実なうえに、公共的利益に反する行為は、経済的にまったく釣り合わないことがわかります。そんなわけで、当面はクローン人間を見ることはないでしょう。
 ただし、「当面は」というところがポイントです。馬の話のように、家畜に対しては今後どんどん活用されていくはずで、その中で、動物における遺伝的要素と後天的要素の区別は明らかになっていきます。それにより、クローン人間によって得られる収益の確実性は徐々に上昇していくはずです。そうなってしまえば法の抜け穴を探って取り組もうとする輩が出てくる可能性は大いにあります。
 クローン人間を阻止するのが目的であれば、上記の期待される利益が生じないような形で社会制度を設計しておく、というのもありかもしれません。