はる なみ みらい

雑音のない音の感じ。技術のみらいを考えたい

農業機械化と農村経済

今日は、農業の話。農村移住して農業を始めてもうまくいかない、なんて話もありますし、大規模法人化して成功しているなんて話もあって、実態はよくわかりません。
わからないのですが、わからないなりにちょっと考えてみたいと思います。
 まずは、経営的な話から。収穫までに必要な資源を考えてみると、土地、肥料、水、種、(作物によっては)ビニールなどの機材に加えて、作付け準備の段階から収穫まで、さまざまな作業があるので、それを実行するためのヒューマンリソースが必要となります。
 農業機械は、このヒューマンリソースを置き換える存在です。ただ、農業は重労働のイメージが強かったため、農業機械の導入目的は作業軽減が目的であったようです。この作業軽減は、日本で高齢化した零細農家が事業を続けてこれた大きな理由だったようにも思えます。
 このような、高齢化した農家もさすがに限界を迎え、ここ10年ぐらいは、比較的事業意欲の強い農家が大規模化する流れになってきています。そうであれば、農業の機械化の目的も農家の作業軽減から、大規模経営を効率化する仕組み、に変わってくるはずです。
 ここで問題になるのは、農業事業者が大規模化を進める際の経緯で、元々小規模事業者を想定して区分けされていた土地を少しずつ集めて大規模化したため、きれいな形の巨大な土地ではないということがポイントです。農機が一度に処理する幅を広げても作業がやりにくくなるだけですなので、小規模事業者向けと同じ機械を使うのですが、その場合、大規模化しても作業効率は変わりません。
 では、どのような農業機械であれば競争力向上につながるのか、と考えると、一人で複数台を同時に操作できるような機械、という結論になります。単位時間に処理できる面積が同じであっても、複数台が操作できれば、効率が上がります。実際には,複数台を同時に細かく操縦することはできないので、最初に作業範囲を指定したら自動的に動作するような仕組み、いわゆる無人化農機です。そういう意味では、近年大規模化した事業者と無人化農機は相性が良い組み合わせだといえます。
 実際に導入を進めるためには、まずは製品を実現することが大事ですが、価格の問題もあります。ただ、これについてはファイナンスをうまく活用した仕組みで解決できそうに思えますので、そういうビジネスが出てくるのではないかと思います。
 
 このように、大規模事業者に無人化農機が普及した時代を考えたときに、農村経済というものが存続しうるのか、という点が次の問題です。
 自動化により極限まで従業員を削減してしまうと、農村にすまなければいけない人口は現在よりもさらに少なくなります。農村内にかつて存在していて商業機能は、すでに自動車交通の発展で、ロードサイドの巨大店舗に吸い上げられてしまっていますので、今後農業従事者が減っていけば、もはやコミュニティとして成立しなくなり、住民向けのサービスを提供する人もいなくなってしまいます。自動化は、同時に遠隔操作も実現しますので、大規模事業者もいざというときに駆け付けることが可能であれば、農村内に住む必要もなく、いよいよ農村の無人化となります。
 こんな流れを予測しておりますが、交通ネットワークの観点で少し懸念があります。交通量があまり多くないネットワーク(県道など)は地域のコミュニティで活用されているという理由で維持されているところも多くあります。このネットワークを使う側からすれば、そのコミュニティに存続してもらいたいのです。そう考えると考慮して、ネットワーク利用者側の負担で農村を維持するという施策も出てくるのかもしれません。