はる なみ みらい

雑音のない音の感じ。技術のみらいを考えたい

撤退の作法

岩手県紫波町、400世帯がFTTHもADSLも使えない状況に - エキサイトニュース

最近気になった、この話題。
ざっくり言えば、地方創生で話題になった自治体なのに、高速インターネットがなくなってしまうかもしれない、という話。

この話、コンパクトシティの文脈の中で、起こるべくして起こったという感想です。
「中心部に行政施設や商業施設を集約して」というのは、コンパクトシティの派手な一面ですが、一方、フォーカスしない地区から徐々に撤退していく、というのがもう一つのポイントです。

できるだけ負の面を意識させないために、目立つ施設を作って、自発的な住民移動を促す、というがこれまでのコンパクトシティの戦略でした。しかし、結局自発的な住民移動は限定的で、その結果、住民サービスの整理にも踏み切れず、「コンパクトシティは失敗」と決めつける人が出てくる始末でした。

 ただ、「新規投資はしない」という方針は比較的実行しやすいもので、実際に投資はほとんどされていないはずです。その結果、インフラの更新周期が最も早い通信が直撃を食らったわけです。100年前の水道管と最新の水道管をつなぐことはできても、旧方式と新方式の通信を直接つなぐことはできません。通信はどうしても更新し続ける必要があるのです。

 もしかしたらほとんど投資なしで通信をアップグレード可能な技術が出てくるかもしれませんが、投資余力のある都市部はもっと先の技術を導入するはずで、本質的に通信の発展が止まらない限り、解決しない問題です。


 では、どうするべきなのか、というと、そこで、明確に将来の撤退を示したうえで、時限的政策として最低限の新規投資をする、というのが答えだと思います。要するに「公的支援は今回が最後」というメッセージです。

 もちろん、こういう流れをやりすぎると、冷たい政治になってしまうので、やるとしても慎重にやる必要はあるとは思います。ただ、やらないと最低限のサービスも維持できなくなってしまうし、最低限のサービス維持でいっぱいいっぱいでは新しい取り組みは何もできなくなってしまうのも現実です。私自身そういう立場ではありませんが、この辺りを上手にまとめていく技術、というのが本当は重要なのかもしれません。